一、陸軍のエリート達の根拠なき過信
一、驕慢(きょうまん)なる無知
一、エリート意識と出世欲の横溢(おういつ)
一、偏差値優等生の底知れぬ無責任
太平洋戦争の六年前。満州とモンゴル国境で、日本軍とソビエト軍が数次にわたる野戦を繰り広げた「ノモンハン事件」は、日本軍の死者約二万人、兵の90%が死傷するという凄惨な結末に終わった。
参謀本部の軍務官僚や軍のエリート達は、敵の戦力や装備を十分把握することなく、ひたすら突撃を命じ、現在の中国北東部、遠い満蒙の地に、あたら若い兵士達の屍の山を築いたのである。近代史の研究や小説で知られる半藤一利氏によると、その敗北の要因は先の四つだと言う。
財務省はじめ、今年相次いで表面化した高級官僚達の文書改ざんや隠ぺいなどの不祥事。しかもあの傲慢な所作の底流にあるのは この四つと同じ性向なのではないか。このまま彼等に任せておいて日本は大丈夫なのか?。怒りと共に不安を懐いた国民は多いのではなかろうか。
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ノモンハン事件後の歴史を検証していて、更に愕然とするのは、この敗因を封印して反省がなされなかったことである。箝口令や現場将校を自殺に追い込むなどして、軍部はあの惨敗の責任を隠ぺいしたという。結果、血の教訓を生かすことがないまま、太平洋戦争の敗北へと突き進んでいったのである。
さらに、終戦の時。陸軍省参謀本部・市ヶ谷の庭で、八月十四日の晩から十七日まで延々と火が燃えていたという。都合の悪い資料は残すなとの判断か。「国家は、資料の整理保存、それがお前の仕事だろう」と半藤さんは言う。
これも又、最近起こっている国会での成り行きを思い起こさせる。
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いよいよ平成の三十年が終わろうとしている。世界情勢は益々厳しくなるだろう。私は何でも戦争に結びつける勢力に与するものではない。しかし、権力に阿(おもね)りうまく生きたつもりが結果 又、道を誤らせはしないかと常に危惧を抱いている。官僚は勿論 特に政治家は心しておかなくてはならない。
日本には、財や権力は乏しくても、誇り高く生きるという伝統がある。平和で気品ある新しい時代を期待したいものである。
古川 忠