世界一貧しい大統領と言われた南米ウルグアイの第四代大統領、ホセ・ムヒカさん(八十歳)の言葉だ。ムヒカさんはこの四月日本を訪れ、日本の精神文化を讃えると共に、特に若者に対し「日本人は魂を失ってきたのではないか」との警告を残し帰っていった。
丁度同じ頃。リオ・オリンピックの男子バドミントンの金メダル最有力候補だった桃田賢斗選手(当時二十一歳)が、闇のカジノ賭博に問われ、代表選手から外された。その時の記者会見での言葉はこうだ。
「派手な生活をしたい。それにガキんちょが憧れて、バドミントンを頑張る様になると思った。」 まだ二十歳底々の若者。彼個人を責めるつもりはない。多分、今の日本の若者の多くが彼と同様に金儲けをしていかに豪華な生活を送るかが人生の価値と考えているのかも知れない。そして更に私を憂うつにしたのは これに対するマスコミだ。彼のプライバシーを暴き立てて追い討ちをかけるか、或いは同情するか二手に分かれた。「金儲けこそが子供の憧れ」ということには知識人然としたキャスターたちも全く疑問を示さなかった。
ムヒカさんはこうも言っている「幸せとはものを買うことだと勘違いしている」と。子供たちに憧れて欲しいのはむしろ、厳しい練習に耐え、夢や目標に向かってひたむきに生きる姿だ。スポーツは、その事をストレートに伝える力を持っている。幸いリオでは、日本の選手達が大活躍。たとえ身体にハンディを背負っていても、又必ずしも環境に恵まれなくとも諦めずに努力した姿が、多くの感動を呼んだ。そして四年後は待望の日本でのオリンピック・パラリンピック大会。大会が商業主義に走り過ぎとの懸念もある。メダルを獲った選手がそれなりの褒美を貰うのは時代の趨勢かもしれない。しかし、スポーツを通じてこそ、金儲けとは違った、人生の価値を示してほしいと思う。
「愛情や人間関係や子供や友人を持つこと。この必要最小限のものを持つことこそが最も幸せ」(ムヒカさん)なのではあるまいか。 |